2019-04-16

旅行に苦手意識のあった私が見つけた、できるだけがんばらない旅。「自分だけの発見」を追求する楽しみ方

ご褒美旅行

エスカレーター専門サイト『東京エスカレーター』を運営している田村美葉さんが、旅行が苦手な人も楽しめる「ご褒美旅行」を紹介します。旅行先でも普段通りのことを行うという「できるだけがんばらない旅」は初心者も実践しやすい旅行です。

ご褒美旅行

初めてのひとり海外旅はキューバ。
「なんとなくネタになりそうだから」と選んだ場所でした


日本でおそらく唯一のエスカレーター専門サイト『東京エスカレーター』というWebサイトを運営している田村美葉と申します。

「世界中のかっこいいエスカレーターの写真を撮って、収集する」という謎の使命をライフワークにしてから15年ほど、やむを得ず旅に出ることが増えました。海外には年に1度、日本国内は、日帰りなども含めれば1カ月に1度というペースで旅行に行っています。

「やむを得ず」というのは、もともと私は旅行に対して苦手意識が強かったからです。

ガイドブックを見て、有名な観光地や史跡をひと通り巡っても、どうもいまひとつ楽しめない。地元の人しか知らないお店にふらっと立ち寄って美味しいものに出会ったり、そこでの会話を楽しんだり、というのもぴんとこない。自分はそういった「旅の醍醐味」といったものをあまり味わえていないんじゃないか。そんな気がしていたからです。

冒頭にもある通り、初めてひとりで行った海外旅行先のキューバでは、怖くてタクシーに乗ることも、おもしろそうなお店やクラブに入ることもできませんでした。ただひたすら滞在するホテルがあるハバナ旧市街を徒歩でウロウロして、英語を話す詐欺師の人に追いかけられ、逃げ続けるという旅行でした。

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キューバでの写真を振り返ってみると「それでもなんだかんだ行ってみてよかったよな」と
思えるのが旅の不思議なところでもありますが

「できるだけがんばらない」旅で、私だけの楽しみを見つける

転機となったのは、2009年頃から始めた「スパイラルエスカレーター」巡礼の旅。

スパイラルエスカレーターというのは、世界で三菱電機だけが作れる「曲がるエスカレーター」。世界で50カ所ほどある設置場所の半数以上は日本国内(※1)です。

しかし、ついにそのリストのうち、国内をほぼ見尽くしてしまった私は、アジアなど行きやすい場所から、海外へと出るようになりました。

香港、マカオ、広州、上海、ソウル、台湾。スパイラルエスカレーターの設置場所はオフィスビルのロビーだったり、郊外に立地するデパートだったり。「日本人でここに観光として訪れたのは私だけなんではないか」と思うような場所を巡ることもありました。

※1…2016年6月時点の情報です。

「普段していることをする」旅行が一番の「ご褒美」

そんな中で、私が気づいたのは、「自分が普段から大好きで、楽しんでいることを旅行先でもすればいいだけだったんだ」ということです。

普段は、そんなにいろんなものを食べ歩いたりもしないし、そもそも人見知り。歴史的構造物や雄大な自然の景色にもあまり興味も知識もない。そんな私が、旅先で突然グルメ好きになったり、フレンドリーになったり、仏像に詳しくなったりする必要もないし、そんな風にできるわけもないのです。

それよりも、自分が心から楽しんでいる「エスカレーター探訪」という趣味を、旅行のときもすればよい。

旅行だから、海外だからといって突然、新しい自分になろうとがんばらずに、普段の自分が一番楽しいことをするのが、私にとっては「ご褒美」なんです。

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スパイラルエスカレーター巡礼の旅で訪れた、上海新世界大丸。
私がいうのもなんですが常軌を逸した建物


「エスカレーター探訪」だとマニアック過ぎますが、たとえば本が好きな人は旅先で本屋さんを巡ればいいし、アートが好きな人は美術館、公園が好きな人は公園を巡ってみればいい。そうすると、人には説明しにくい、自分にしかわからない「旅の感動」に出会えるはずです。

損得を気にしすぎない

「新しい自分に出会おうとしない」ことともうひとつ、私が旅に出るとき自分に言い聞かせていることが、「損得を気にしすぎない」ということです。

安い飛行機をとって、安いホテルをとって、何もかもを「なるべく安く」と考えすぎていると、コストパフォーマンス自体が旅の目的みたいになってしまうことがあります。特に、旅が得意な人ほどそうしたお得な情報を教えてくれることが多いので、真似しようとすればするほど旅行に苦手意識のある人にとって無理をしてしまうことになります。

海外が初めてなら、いきなり安いドミトリーじゃなくて安心できる宿を取ることにお金を使ってもいいだろうし、アクセスが良かったり治安が良かったり、高いものには高いなりの理由があります。これも、自分なりに納得できる予算の中で、できるだけがんばらずに楽しめばいいのです。

「なるべく安く」ではなく、「できるだけがんばらない」方針で海外旅行をするなら、私のおすすめは、まず、とにかくアクセスの良い場所に宿を取ること。

あとは、クレジットカードとスマートフォンさえカバンに入れておけば、旅は乗り切れます。

出発前に海外用のWi-FiかSIMを調達し、現地に着いたらすぐにネットにつながる状態にしておく。そして、空港のATMで、クレジットカードのキャッシングから現地通貨を交通費分など必要最小限おろします。これで準備完了。あとは国内同様に動けます。

現地でわからないことがあったら、スマホを使えばいいんです。慣れない外国語で聞くのではなく、日本語でGoogleに頼る。クレジットカードなら支払いのときに値段を確認して現地通貨を数える手間すらないので、これでホテルと飛行機のチェックイン以外、ほぼ一言も英語や現地語を喋らなくても海外旅行は乗り切れます。

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海外旅行では直接カバンにスマホとパスポートを、カードケースにクレジットカードと交通系ICカードをイン。
とられると困る財布は最初から持ち歩きません


現地のコンビニなどでSIMを入手したり、街中の両替所で両替したほうが安くすむことは多いのですが、現地に着いて即ネットにつながる便利さだったり、両替レートを吟味したり、そもそも両替で詐欺に合わないように注意したりといったことを考えると、自由にストレスなく、かつ安全に動けることにはコスト以上の利点があると思っています。

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海外用のSIMカード

自分だけの感動を手軽に発見できる「ばっかり旅」のすすめ

そうは言っても、そんなにマニアックな趣味もないし、そもそもどこに行っていいのやら、という方におすすめしたいのは、とりあえず「海外旅行初心者におすすめ」とされる旅行地に行ってみること。

海外初心者におすすめする旅行先の条件として私が考えるのは、

(1)飛行機の値段も高くなく、距離も短い
(2)治安が良い
(3)日本人観光客に対して街の人がフレンドリー

という3つの条件です。私が最近行った場所だと、台湾がそれに合致していて、ほぼ国内と同様に旅行ができます。

そして現地に着いてからおすすめしたいのは、てっとり早く何かしらのマニアになる「ばっかり旅」。旅先で、何かひとつのモノをひたすら「撮り続ける」というスタイルです。

ポイントは、誰が見てもあっと驚く景色を追い求めるのではなくて、「よく見ると日本とちょっと違う景色」に注目してみる、ということです。

いきなり「世界遺産」とか「絶景」を求めて、たどり着くのがそもそも難しいような国に行かなくても、圧倒されるほど美しい街並みでなくても、そこらへんをただ歩いていても「日本と違う」おもしろさが、海外の都市には必ずと言っていいほどあります。

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ニューヨークに行ったときは、建物についている非常階段が気になりすぎて、「非常階段」ばっかり撮っていました。

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香港に行ったときは、「竹でできている足場」ばっかり。

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台湾に行ったときは、「ベランダ」ばっかり。

同じものばかりを撮り続けていると、なぜかある瞬間から勝手に順位づけしたり、クラス分けしたり、まるでその道の専門家のように振舞う自分を発見します。そしてそんなときに、とんでもなくかっこいい「最優秀賞」クラスのものに出くわし、謎の感動があるのです。

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台湾のベランダの旅の最優秀作品。すごすぎて10分ぐらい見上げてました


「ばっかり食べる」「ばっかり買う」
のもおすすめです。必ずこうする、というマイルールを決めていると、「どれが一番安いのか」「どれが一番美味しいのか」を気にしなくてよくなるので、気持ちがとても楽になります。そして、ある程度の数を集めると、達成感みたいなものも味わえます。

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私が自分のお土産はこれと決めている「現地構造物のスノードーム」

自分用のガイドブックは自分で作る

「さぁ、旅を楽しむぞ」と身構えるのではなくて、「どうしても見たいものがあるから、やむを得ず旅に出る」。そのくらいのスタンスで、まずは気楽に出かけてもいいと思います。そして、「どうしても見たいもの」をどんどん増やしていく。それが私の、「できるだけがんばらない」旅のスタイルです。

私は「ばっかり旅」の延長で、展望タワーや、遊覧船も「見つけたら必ず登る・乗る」ことが自分のルールになっています。

船については、どこでどんな船に乗っても、歩くのや電車に乗るのとはちょっと違う発見があり楽しいので、エスカレーターに次ぐ第2のライフワークに昇格してしまいました。そうなると今度は、「船に乗るために旅に出る」という循環になります。

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たくさんの数の可動橋やロックゲートをガンガン動かして進む
パリのサン・マルタン運河クルーズ


私は今でもときどき旅行に行く前に、「どこかに見に行くべきエスカレーターの情報が簡潔に詳しくまとまっているようなサイトはないかなぁ」とふと思うことがあります。でもそれって、自分が運営しているサイトになっちゃう。

船も同様で、初めは、ガイドブックの中に「乗れる船はないかなぁ」と探していたのが、だんだん詳しくなっていくと、自分が調べて乗りに行ってガイドサイトを作るほうが手っ取り早い、ということになっていきます。

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川というよりは生活用水のような小さな運河をものすごいスピードのボートが行き交う
バンコクのセンセープ運河


「やむを得ず」旅に出ていたのに、できるだけがんばらない旅のスタイルができたことで、今となっては、そうやって「自分だけの人生の楽しみ方」をどんどん増やしていくことが、私にとって一番大事な「旅に出る理由」になっている気がします。

田村美葉

1984年生まれ、石川県金沢市出身。 エスカレーター専門サイト『東京エスカレーター』、乗れる船のサイト『本日は船に乗ります』を運営、コミックマーケットで同人誌を頒布しています。
旅情報サイト『できるだけがんばらないひとりたび』を元にした書籍が2018年4月にKADOKAWAより刊行されましたが、旅行が得意なわけではありません。
Web:東京エスカレーター

編集:はてな編集部

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