2019-07-25公開

身体も心も解放できるひとり飯の時間が、私にとっての“ご褒美ご飯”

ご褒美ご飯

うなぎ大好きな会社員・笹山美波さんにとって、誰にも邪魔されず思い切り好物を食べたり飲んだりする時間は自分にとっての「ご褒美ご飯」。居酒屋、バー、遠征先でのうなぎ定食など、充実な休息を取りたいときに味わいたい「ひとり飯」を紹介します。

身も心も解放できる時間が、私にとってのご褒美に

気づけば社会人9年目。新卒のときは仕事をやっていけるか不安で仕方なく、ただ目の前の作業をさばくことしかできなかった。しかし今ではかなり気持ちの余裕を持てるようになった。そうすると、同時にやれることも学びたいことも増えてくる。

おかげでゆっくりする時間が減ってしまったが、意外にもつらくはない。地道な努力を重ねて結果が出る過程は楽しいし、それを評価されるのは光栄だからだ。

うれしい悲鳴の出る生活はどこまでも頑張れる気がする。でも、無理をしすぎて体を壊してしまっては本末転倒だ。体力やモチベーションを保つため、いつもより少しお金をかけて短い時間で充実した休息を取ろうと考えるようになった。

短時間で気分転換できるものといえば、食事。せっかくだし、誰かを誘いたいところだが、休日の予定を縛るのは申し訳ないし、平日夜に「軽くご飯でも」と思ったときには時間が遅すぎるので忍びない。

なんとか予定を合わせられたとしても、相手の味の好みに合わせすぎて、食べたいものを食べられないこともしばしば。盛り上げなければと会話に集中してしまい、ほとんど何も食べられないこともある。己の気を使いすぎる性分にちょっと嫌気がさす。

そんなシチュエーションに何度も直面した結果、大事な休息には、好きなものを好きなだけ、私が好きなときに食べればいいのではーーと悟り、「ひとり飯」をする機会が増えた。

 

誰にも邪魔されず、身も心も解放できる。そんな時間が自分へのご褒美になるのだ。

好物のうなぎで、さらなる「ひとり飯」の楽しみを知る

私は特に、うなぎ屋で好物のうなぎをひとりで食べる時間がたまらなく好きだ。もう数年前からハマっている。高価でカロリーも高いが、その日ばかりは節約もダイエットも考えない。

入店したら真剣勝負。一応懐と相談しつつメニューの中から精鋭をじっくり選んだら、焼き上がりまでひたすら耐える。

ついに私の元へ運ばれてきたうなぎは、この上ないほど神々しく思える。そして息つく暇もなく、ひといきで食べる。冷めてしまっては味が落ちるし、うなぎに失礼だと思っているからだ。

そうやって、うなぎと正面から向き合い味わう時間を宝物のように思っている。

うなぎ

うなぎのおかげで、頑張って稼ごう、運動して体を軽くしておこうと思える

それに、うなぎ屋であれば、うな重やうな丼以外にも「肝焼き」など、うなぎのさまざまな部位を使った一品料理が豊富にそろっていることも多い。そのため、頭のてっぺんから尻尾の先まで堪能できる喜びがある。

うなぎ屋であらゆる料理を食べたのが、うなぎ自体にハマるきっかけにもなった。どんどんうなぎのことを知りたくなり、とことん追いかけるようになってしまった。日本各地のうなぎ屋へ出向くようになってからは、さばき方や調理法が各地域や店舗によって異なるというのを知った。例えば焼く前に蒸しの工程を入れるものと、蒸さずにそのまま焼く……という違い。一般的に「関東風」と「関西風」と呼ばれる焼き方だ。どちらもおいしいけれど、今度はなぜ焼き方が違うかが気になり、自ら調べてみるようになる。うなぎにまつわる情報に詳しくなっていく工程も、楽しい。

ひとりでお店に行くと心に余裕が持てるので、いろんな発見があるし、知らなかった楽しみ方にもチャレンジしやすいように思う。おいしいものを独り占めできる喜び以外にも、多面的に満足を得られる。

うなぎをきっかけに、食事それだけに限らない外食の魅力を一層知ることができた。それに、ひとりだと、無限に湧いてくる知的好奇心も解放させやすい。その経験が、今のひとり飯を楽しむ生活に繋がっている。

うなぎ

うなぎを食べる楽しみに目覚め調べていった結果、マニアとして取材を受けるまでに

一度「ひとり飯」に成功すると、自信が持てるようになる

……なんて言いながら、実は、昔はひとりで飲食店へ行くのが苦手だった。知らないお店は値段や味付けがわからない怖さがあるし、そもそもひとりでどう過ごせばいいのかわからず、変なことをして誰かに指をさされたら恥ずかしいと考えていたからだ。

それでも楽しく思えるようになったのは、うなぎ屋で得られたような充実した食体験の積み重ねが影響し、自信を持てるようになってきたのだと思う。

色んな理由でひとりで外食するのに苦手意識を持っている方がいると思うが、ここからは私の体験談を紹介しながら「ひとり飯」の楽しさや魅力をお伝えしたいと思う。

居心地のいい居酒屋で、好きなものだけを食べる楽しさ

ひとりで外食するときにハードルとなるのは、価格、味、そして雰囲気ではないだろうか。

「ひとり飯にチャレンジしてみよう」と少しでも思ったら、まずは良心的価格と懐かしい味、気取らない雰囲気が魅力の大衆居酒屋、いわゆる「赤ちょうちん」をおすすめしたい。

とはいえ、居酒屋へひとりで入るのには気がひける方も多いだろう。お店ならではのルールもあるかもしれない。だから慣れないうちは、あらかじめブログや口コミサイト、SNSなどで調べておくと安心だ。飲み屋が好きな友人に聞いてみるのもいいだろう。

私が確認するポイントは、お店の方が親切で、注文に独自ルールがなく、女性客もリピートしているかどうか。そういう場所なら、初めてでも入りやすいうえ、店内の空気にのまれることなく心地よく過ごせるに違いないと思っている。

串バー あ・うん

例えば、月島の串焼き屋「串バー あ・うん」もその条件を満たす店。感じの良いおかみさんが迎えてくれるので安心できるし、串焼きは1串から自由に頼める。店内には「おひとりさま」も、女性客を含むグループも多く、食事を楽しんでいる。私自身、その居心地の良さに惹かれ何年も通っている。

店内の壁にずらっと並ぶメニューの短冊は壮観で、どれもリーズナブル。何を食べようかつい悩んでしまう。まずはビールと串焼き中心とした焼き物を何種類か。料理を待つ間、コの字型のカウンターに目をやれば、中にある焼き場がしっかり見える。ライブ感満点だ。

焼き物が仕上がるまでには少し時間がかかるので、火を使わないメニューを1、2品組み合わせて頼んでおくのがおすすめだ。私なら、「塩らっきょ」でさっぱり済ませたり、お腹が減って我慢ならないときは「鶏わさ」など軽めの料理を頼んだりする。

串バー あ・うん

焼き物は部位に応じて独特の名前があるので、困ったらお店の方に聞きながら頼んでみると良い。私が決まって頼むのは「カシラ」と「セセリ」。どちらも食感がしっかりとしていて、旨味が強いのがお気に入り。

串バー あ・うん

カシラとセセリはそのままでもおいしいが、特製の辛味噌をつけても美味

焼き物を2、3品食べて調子を掴んだら、あとは意のままに過ごすだけ。料理をもう少し頼んでもいいし、〆を頼むのもあり。自分の胃袋と相談しながら追加しよう。

串バー あ・うん

品数限定の白レバー焼きと〆に頼むことも多いチゲラーメン

好きなものを好きなだけ食べても、大体3,000円前後でおさまる。そして、「串バー あ・うん」のような居酒屋はメニューも豊富なので「また来たい」「今度はあれを食べよう」という気持ちにもなりやすい。ひとり飯をするうえでの楽しみは、やっぱりこの「自分の欲望に忠実になれる」ところもあるんじゃないかと思う。

仕事先や自宅近くに、お気に入りの「赤ちょうちん」をひとつでも開拓できたら、外食のとき自分のペースで過ごすコツをつかめるし、ほかのお店へチャレンジする気持ちも湧きやすい。これをきっかけに、ひとり飯もどんどん楽しくなっていくはずだ。

ひとり「バー」で、ちょっと大人な贅沢時間を堪能

ある程度ひとり飯ができるようになると、「お腹はいっぱいだけどもう少し飲みたい」シチュエーションで使えるお店が欲しくなってくる。そういうときに便利なのがバーだ。

けれど、バーへ行こうと思っても、お店のアテがない、作法がわからない、料金の目安がわからない……と入る前から躊躇してしまう人も少なくないように思う。

おすすめは、お酒好きな友人にお店へ連れて行ってもらい、気に入ったら後日すぐにひとりで行ってみること。一度訪れていることで勝手がわかる安心感もあるし、マスターも良くしてくれるはず。

私がたまのご褒美にうかがうのは、銀座のバー「Dolphy(ドルフィー)」。銀座六丁目の賑やかな通りのビルの地下にある。重厚な扉を開けると大きなカウンターにマスターがひとり。隠れ家のような、うっとりする空間が広がっている。

数年前にジャズ業界で働く友人に教わったお店で、店名はマルチ・リード奏者「エリック・ドルフィー」から名付けられているそう。静かに流れるBGMも厳選されたジャズばかりで、ジャズ好きにはたまらない空間だ。

私がここで必ず頼むのが「グラスホッパー」。ペパーミントとカカオのリキュール、生クリームをシェイクして作るカクテルで、味は上品なチョコミントアイスと言ったところか。

Dolphy(ドルフィー)

グラスホッパーはサラサラしている印象があったが、Dolphyのは泡立ちがフワフワで恍惚とする口当たりなのが気に入っている。

いつもは体型に気を使い甘いものを控えているが、このグラスホッパーだけは特別に飲んでいいことにしている。泡のような口溶けと、舌にじんわり染みる甘さとミントの爽やかさ。

ささやかな量のごちそうをゆっくり飲むと、心を撫でられるようにしみじみ癒されるのだ。ほかにも、マスターに好みや気分を伝えて、おまかせをいただきながらお酒を教えてもらうのも、甘美で大好きな時間だ。

Dolphy(ドルフィー)

アイリッシュウイスキー「ブッシュミルズ」を使ったウイスキーソーダ。
すっきり飲めるのでウイスキー初心者にもおすすめしたい

頼むものにもよるが、数杯ゆっくりいただいて金額は大体4,000〜5,000円ほど。頻繁には通えないけれど、例えば仕事がうまくいった日や、逆に気持ちが落ち込んだ日など、自分自身を甘やかしたいときのご褒美と思えば惜しくない。

若い頃、ひとりでバーへ通う大人に憧れていた。1杯数千円の世界。懐に余裕があり、孤独も楽しめるかっこよさに惹かれたのだ。

時を経てバーでひとりで飲んでいると、ときどき当時のことを思い出す。バーで得られるご褒美は、贅沢なくつろぎのほかにも、「大人になってよかった」と感じられる点にもあるかもしれない。

好物を食べるためひとり“遠征”。非日常感が最高に楽しい

ひとりである程度どんな飲食店も行けるようになったら、少し遠出をしてみるのもいい。私はまとまった時間が取れると、ときどきその日の思いつきで“遠征”するのだが、とにかく最高なのでぜひおすすめしたい。

例として、好物のうなぎを食べに、新幹線で東京から静岡へ行ったときのことを紹介しよう。

朝の新幹線で静岡駅へ早めに着いたら、街の古本屋で好きなだけ本を漁る。その土地にちなむ人や文化の本の陳列を見たり、店主が厳選する隠れた名著が発見できるのが楽しみなのだ。ここで購入できた本を旅の友に、街を移動する。

ランチ時になったら事前に予約していたうなぎ屋へ。静岡駅から少し離れた「石橋うなぎ店」。

石橋うなぎ店

石橋うなぎ店は創業50年余の老舗で、メインのお食事が「一本焼きうなぎ定食」のみという潔さ。これを求めて全国から訪れる人も多い。

頼むのはもちろん名物の「一本焼きうなぎ定食」と、ビール。ちょっとしたアテも欠かさない。

石橋うなぎ店のうざく

うなぎときゅうりの酢の物「うざく」はお酒のアテにピッタリ。他店よりも汁気が多い分さっぱり感が強い。うざくや定食の漬物を食べつつ、うなぎの焼き上がりを待つのは至福の時間だ。

石橋うなぎ店の一本焼きうなぎ定食

お目当てである一本焼きうなぎ定食。その名の通りうなぎが頭から尻尾まですべて提供される定食だ。金額は仕入れ値によって変動する(2019年7月11日時点では税込み4,700円)。そのインパクトあるうなぎのお姿を拝めるだけで「静岡まで来た甲斐があった」と思わされるが、さらなる感動は続く。

石橋うなぎ店は、蒸しの工程の入らない、いわゆる「関西風」。カラメルのような香ばしい匂い。口に入れるとふっくら肉厚、食感はパリパリでジューシー。そう、これを食べるために来たんだーー。

ボリュームがあり濃厚な味付けだが、箸が止まらない。最後に大事にとっておいたうなぎの頭をまるごとバリバリ食べて〆る。うなぎの頭は食べなくても良いが、しっかり味付けして焼き上げられており、カラッと揚げたえびのお頭を食べているような感覚。興味があればぜひチャレンジしてほしい。ここまで好物のうなぎを余すことなく堪能できるなら、うなぎ好きの私が片道約6,000円かけて訪れた気持ちもおわかりいただけるだろう。

お店を後にしたら、その足で「サウナしきじ」へ。ここは「サウナの聖地」と呼ばれる場所で、ここの「薬草サウナ」の熱波を浴びて、天然水の水風呂に入るのを短いサイクルで繰り返すのが非常に良かった。風呂から上がったときには心身の疲れが緩やかに取れており、本当にリラックスできた。

サウナしきじ

「サウナしきじ」は24時間営業年中無休! 思いついたとき、思いつくままに、好きなだけ入れるのがうれしい。男性は平日1,400円、土日祝日は1,600円。女性は平日・土日祝日関係なく900円で入れる(2019年7月11日時点)。早朝など、よりお得に入れるタイムサービスもある。

ひとり旅は同行者がいない分、体験を共有して感想を言い合う楽しみには欠けるが、その分好きなときに好きな場所へ、好きなだけいられる自由さがある。

好きなだけ本を読んで、うなぎを堪能して、気の済むまでサウナで汗をかける。そんなきままな時間が、私の心をほぐしてくれる。

また、窮屈(きゅうくつ)な日常からエスケープしている気分にもなれる。毎日を暮らす街から少しでも離れると精神的な解放感があるし、その後押しもあって、仕事のことを考えず自由に過ごす思い切りがつく。そうやって身も心も解放される小旅行と、そこで食べるひとり飯は、まさにご褒美と言えるだろう。

毎日を楽しく暮らすために、なくてはならない自分のためのご褒美

数年前、仕事で繁忙期が続き、毎日同じコンビニのご飯を食べて、ひとつの目的のために会社と家の往復だけを半年ほど続けたところ、世界に取り残された気分になったことがあった。気づけば体もかなり痩せていた。

どんなにやり甲斐のある仕事でも、限られた環境だけで過ごすと、新しい知識を得たりクリエイティブな発想をする機会が減ってしまうこともある。誰かや何かへの考え方や関わり方を変える機会も少なくなるし、結果的に仕事にもよくない。それに、休みなく頑張り続けると体の調子も崩しやすい。

そういった経験から、日頃のガス抜きの重要さを思い知った。以降、誰にも邪魔されずにひとりで好きなことを探求し、好きなものを食べ、リラックスする時間を大切に生きている。そのお陰もあって「明日も頑張ろう」と健康的に暮らすことができるし、そのときに得た知識や考え方が、後々仕事や生活で役立つことも多い。

私にとって、ひとり飯の時間は身も心も満たしてくれる自分のための豊かなご褒美となっている。今では、人生になくてはならない存在だ。

この記事を書いた人笹山美波

編集記者を経て、外資マーケティングサービスのカスタマーサクセス、マーケター、テクニカルセールス。ライター。鰻オタク。東京と食に関連する歴史/文化/文学/お店を調べるのがライフワーク。

Twitter:@mimi373mimi
ブログ:話半分で聞いてください

編集:はてな編集部

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